東京国立博物館鑑賞記

東京国立博物館鑑賞記

週末の夜、時々芸術に触れたくなる。

上野の国立博物館は、金曜夜9時までやっていて、仕事終わりに行くのに最適だ。

この日も、早々に仕事を切り上げて芸術を愛する先輩とTXに乗って上野に向かった。

駅を降りて、道すがら一軒の英国パブがあったから、鑑賞前酒としてウイスキーを一杯だけやることにした。

アイラモルトのラフロイグ10年、アートベッグ10年。

アイラ島で培われたピートが燻すスモーキーな味わいが口腔内に広がる。

博物鑑賞は過去への旅。時をかけるには香りが不可欠だ。

ピート香を漂わせ、夜の博物館へ。

 

真っ先に見たのは特別展示の奈良大和四寺のみほとけ。

中でも特別印象に残ったのは、岡寺 義淵僧正坐像(※撮影不可)

奈良時代の高僧の像らしいが、じっと眺めていると人生で出会った人格者の顔が思い浮かんだ。

徳の高い人間に宿る共通の神性を感じたのかもしれない。

仏像達を後にし、次は浮世絵の展示へ。

葛飾北斎 冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏

いままで様々な媒体や土産屋で見てきた北斎の傑作。

実物を見るのは初めてだったが、粗々しくも調和のとれた構図、

その波しぶきのひとつひとつが琴線に触れてくる。

実物を見て漠然と見過ごしていた美しさを認識できました。

静かな館内を何を見る訳でもなく、歩いていると強く惹かれる物が。

アイヌの陣羽織。

愛する北の民ゆかりの品。

第二の故郷と勝手に呼ばせてもらっているが、こんにも惹かれるのは

あるいは遠いどこかでつながりが…

そんな空想に耽りながら、一度外に出て夜の空気を吸う。

 

最後は、オリエンタルアートを求めて東洋館へ。

東洋の壺や皿。

 

インドのガネーシャ像に会社の繁栄と自分のささやかな富を祈っている時、閉館のアナウンスが流れる。

過去と未来、空想と現実を行き来する旅は終わった。

博物館を出ると美しい芸術の余韻に浸りながらも、また日常の生活に戻らなければならない。

でも大丈夫だ。

アイラウイスキーを飲んで、目を閉じればいい。

その香りを感じれば、いつでも旅の続きが始まる。

<マーケティング部社員W・監修、編集埼玉営業所社員I>